音を愛し、求めるすべての人に 木村勝英サウンドアンビエンス
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この地球上、たくさんの音が限りなく語りかけます。風、雨、波などが長い年月をかけて自然の「音のオブジェ」を創り、人は様々な工夫をこらして音の出る道具、「楽器」などを作りました。町の塔からカラクリ時計の響き、隣の町から手回しオルガンのメロディーが風に乗って聞こえてきます。歴史を刻むヨーロッパの風景。目で知らせる狼煙のように木を叩いて伝えるアフリカのトーキング・ドラム。北極の氷上は静寂の世界。神秘を語るアジアの神話。など50年に亘って世界各地で収録した音の風景。木村勝英「サウンドアンビエンス」をお届けします。

マサイの狩り

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人類が地球上を最初に2本足で歩いたといわれるグレート・リフト・バレー(大地溝帯)。その通り道のケニア。ここにはゾウ、キリン、ガゼル、チーター、サイなど、たくさんの野生動物が生息しています。家畜の遊牧で生計を立てていたマサイ族。その昔、マサイの戦士はライオンやヒョウをはじめとする猛獣と渡り合いました。いよいよ儀式の始まりです。左右から何やら唸りとも掛け声とも聞こえる不思議な呪文を口から発しながらマサイ族の勇士たちが飛び跳ねながら踊りはじめました。空にはイーグル、地上ではヌーの大群が騒ぎ立てます。シマウマの吠える合図で様々な動物たちが走り出しました。その後を追うブーメランのような狩りの道具が、鋭い音を立てて宙を舞います。しばらくして、どこまでも続くサバンナは祭りへと変わりました。
文:木村勝英

アルプスの風景

フランス、シャモニーの町から車で15分位走るとアルジャンティエール村がある。そこからロープウェーに乗り、グラン・モンテに登った。ヨーロッパの最高峰モンブラン山群、大パノラマ絶景が飛び込んで来ました。モンブラン、グランドジョラス、エギュヴェルト、エギュデュドリュ、シャモニ針峰群、などなど3、4千メートル級の急峻な氷雪の峰々が美しく連なっている。クライマーは氷河にハーケンを響かせ、身体を支えながらこの最高の舞台を一歩一歩ゆっくりと頂きをめざしてゆきます。それを応援するかのように、町のサン・ミシェル教会の鐘の音が響き、森を駆け抜ける馬車が鈴を振り、赤い登山電車が汽笛を鳴らし、モンタンヴェールの氷河の方に登って行きました。絵画に描かれているような音風景です。
文:木村勝英

アジアの神秘

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夜明けとともに幾重にも重なる棚田が姿を現しました。空を見上げるとあちらこちらに立つ竹の風車、ピンジャカンが風を受けてランダムに回っています。やがて霧が覆いかぶさり、その姿は幻想的な世界に誘い込んで行きます。森の中の寺院では、頭飾り、華やかな衣装、大きく開いた目、独特な指の動き、静止した妖しい影が浮かびます。青銅楽器「ガムラン」の重厚な響きをうけて舞踊が始まります。高く伸びた美しい音色は森のなかを行き交い踊っているかのようです。すると、大地に振動する重低音が波のようにうねりながら割り込んできます。太さ20センチ、長さ4メートルもある竹の打楽器「ジュゴク」です。演奏者がその上に乗って力いっぱい壮大な音を奏でています。それに応えるかのように、大勢の男たちが発声するリズムが飛び込んで来ました。「ケチャ」です。古代英雄のラーマ王子の伝説とヒンドゥー教の神話とをまとめた「ラーマヤナ」の物語を中心に展開するケチャダンス。男たちはさまざまな手の動きや体を揺らし、「チヤ」という迫力ある合唱を繰り返しながら「神の島」の森に余韻を残してゆきました。
文:木村勝英

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